ストーリー

犬の背中に宇宙があるって言われた朝

『犬の背中に宇宙があるって言われた朝』

朝の散歩は、うちの犬との大切な日課
この日も変わらず、のんびりした空気の中で歩いていた☁️
曇り空の下、ちょっと湿った風が吹いてて
犬はマイペースに草のにおいをかぎながら、ぐいぐい進んでいく‍♀️

私は少し寝ぼけながら、ただついていってただけだった
いつもと変わらない、はずだった。

なのに。
公園の入口あたりで、急に知らない女の人が現れた‍♀️✨

白っぽいワンピースに、妙にすっきりした髪型
ふわっと近づいてきたかと思うと、唐突にしゃがみ込んで——

「あなたの犬…いま、背中が痛いって言ってます」

えっ。

一瞬、風の音すら止まった気がした

うちの犬はきょとんとしている
私はといえば、口を半開きのまま完全に固まってた
彼女はそのまま、犬の背中あたりに手をそっとかざし、両手でふんわりはさむようなかたちに

「ちょっと整えますね」

もう、何が起きてるのか分からない
でも止めるタイミングも失って、私はただ立ち尽くしていた

犬は無言。というか、ちょっと迷惑そう

沈黙に耐えきれず、私はそっと口を開いた

「あの……波動ですか?」

彼女はすぐに首を横にふった‍♀️
「いいえ。人間がもともと持ってる力です」

お、おう…。
なんかそれ、波動っぽいけど波動ではないってこと?
本人はすごく落ち着いてるけど、こっちはどんどん情報が渋滞してくる

「じゃあ、周波数……とか?」
思い切って聞いてみた。

「周波数?」⁉️

完全に「???」な顔された❓❓
この人、波動は否定するけど、周波数の概念も無いらしい

なんだろう、わたしのほうがヘンなこと言ってる空気になってない?

「えっと……幽体離脱とか……できたりしますか?」
言ってから、なに言ってんだ自分と思った

彼女は少し考えるふうに首をかしげて、でもふわっと笑った☺️

「そういうのじゃないんです。ただ、調和を戻してるだけです」

あ、また新語きた。「調和」‍♀️

たぶんそれも、波動だよね…って喉まで出かけて、やめた
私は「なるほどぉ…」っていう声にならない声でごまかした

数秒後、彼女は手をすっと離し、立ち上がった️

「もう、大丈夫そうですね。表情がやわらぎました」

犬は、その場でぼーっとしている
やわらいだというより、単にぼんやりしてるだけに見えるけど、
とりあえず私は言った。

「……はい、なんかスッキリした感じがします」

ほんとは何も変わってないけど、なんとなく、そう言ってあげたくなった

彼女はうなずいて、犬の頭を軽くなでると
「じゃあ、よい一日を」と言って、またすっと歩いていった‍♀️️

風が吹いて、草がゆれる
ちょっと不思議な余韻が残る

でもその10秒後、うちの犬は草むらに突っ込んで、全力でふんばった
見事なうんちだった

背中の宇宙も、調和も、たぶんこの子には関係なかったみたいだ

私は無言でうんち袋を取り出して、いつものように拾った️
朝の空気が、なんだかちょっとだけ澄んで感じた️